前頭蓋底より発生または同部位へ浸潤した悪性鼻副鼻腔腫瘍の摘出法として、冠状切開・前頭開頭と顔面骨切り術の両者を併用する頭蓋顔面合併切除術は従来からgold standardとして広く施行されてきました。内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)の技術の進歩とナビゲーションなどの手術支援機器のテクノロジーの発達によって、顔面皮膚切開を回避して、経鼻的内視鏡支援下にて冠状切開・前頭開頭で腫瘍を摘出する方法も1997年にYuenらより報告されています。さらに、近年では低侵襲手術の極限とも言うべき方法として経鼻内視鏡下前頭蓋底切除術(Endoscopic transnasal anterior skull base resection)が2006年イタリアのCastelnuovoとピッツバーグ大学 の2つのグループによって確立、報告されました。当科では、先駆者の2つのグループと協力体制を取りながらこの手術法を確立してきました。
従来の鼻副鼻腔悪性腫瘍の手術概念は、癌切除で断端陰性になっても最初に癌組織への切り込むことは予後不良の因子となることから、完全なen bloc摘出が必須であるとされていました。しかしながら、前頭蓋底・副鼻腔のような複雑な三次元構造では完全なen bloc摘出は実質的に極めて困難であり、piecemeal切除であっても、最終的に完全摘出できれば癌の制御率を下げないことが提唱され、適応除外の基準を厳守することによって、経鼻内視鏡下前頭蓋底切除術が保障されています。手術の操作は腫瘍周囲の正常組織から腫瘍中心に向かって、適時腫瘍の減量術と迅速病理診断を行いながら、大部分を摘出します。最後に硬膜を含む頭蓋底残存腫瘍とともに切除し、硬膜形成術で終了します。嗅神経芽細胞腫に経鼻内視鏡下前頭蓋底切除術を施行した症例の手術前と後の画像を呈示します。手術時間は3時間20分、出血量は230mlでした。