|
末梢神経性疾患の内で最も頻度の高い感音難聴の機序を解明し、根本的治療の確立を努めます。特に、21世紀にはさらに有病率が増加すると予想される老人性難聴は個体差が著しく、複雑な素因、つまり多遺伝子疾患としてとらえることができます。このような内的要因を解析し、遺伝子診断による早期の診断法を確立し、難聴を誘発させる環境因子の除去による予防的治療法を目指します。さらに、耳鼻咽喉科医の専門的技術を駆使し、最小侵襲の手術操作による疾病の標的細胞への栄養因子・成長因子の導入などの細胞治療、欠失遺伝子の導入などの遺伝子強化療法、幹細胞移入などの再生医療による根本的治療を確立したいと考えます。

現在、最も力を注いで行っている遺伝性難聴の分子メカニズムの解明の研究を簡単に紹介します。
難聴はあらゆる慢性の神経・感覚器系疾患で最も罹患率の高い疾患として位置付けられています。国内外のデータによると65歳以上の約30%前後に聴覚障害を認め、先天性難聴も1,000出生に1人と高頻度で発生しています。しかしながら、大半の感音性難聴において原因や発症機序は未だ十分に解明されていないのが現状です。感音性難聴の本質的な病因として遺伝子レベルでの研究が注目されています。つまり、全難聴者の1/3に遺伝の関与が示唆され、先天性難聴の半数以上が遺伝性難聴であることから、原因不明の感音性難聴の病態に遺伝子が広くかつ深く関わり合っています。ヒトの遺伝性の感音性難聴を忠実に再現した動物モデルを作成し、難聴の分子病態・機序を解明する突破口を切り開き、根本的治療の現実化に正面から取り組むもので、画期的な技術を駆使することを企画しています。
優性阻害効果による優性遺伝マウスと条件付きノックアウトによる劣性遺伝マウスを開発し、ヒトのGJB2遺伝子変異に等価の動物モデルを確立することとする。優性阻害効果を示すGjb2変異産物をsiRNAの全身投与による配列特異的遺伝子発現抑制現象を利用して特定の変異遺伝子発現を抑制させます。ノックアウトによる劣性遺伝マウスの内耳には正常Gjb2遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを投与して欠失遺伝子をレスキューする。さらに、mt DNA疾患モデルマウス(Mito-Mice)を用いて、病態解析と欠損mtDNAを補完する治療法を開発しようと努力しています。

| 主題 |
内容 |
メンバー |
協力施設 |
| 難聴遺伝子変異マウスの解析 |
遺伝子導入 |
飯塚、井下 |
慶応大学耳鼻咽喉科、京都大学耳鼻咽喉科 |
| 機械工学的解析 |
電磁型補聴器、マウスのDPOAE |
成井、峯川 |
電気通信大学(小池研究室) |
| 新生児難聴の遺伝子解析 |
遺伝子解析 |
林、笠井 |
脳神経内科 |
|